賢い塾の選び方

６−０１３．ベネッセ、家庭教師派遣事業から撤退

　ベネッセ、家庭教師サービスを終了
　（ベネッセのホームページ・２００３年４月２０日閲覧）
　（http://katekyo.benesse.co.jp/top/）

「ベネッセ家庭教師サービス」のご案内は２００２年１２月末を持って終了いたしました。これまでご覧いただきありがとうございました。

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http://www.benesse.co.jp/katei/index.html

　考察

ベネッセが家庭教師派遣に参入したのは、２００１年４月。教材の抱き合わせ販売をせず、受講料と交通費だけ受け取る（他社に多い入会金や講師変更手数料、解約時違約金などは無しとする）方式で、透明な料金体系を示す計画だった。また、講師は大学生を中心に募集するが、家庭教師としての一定の能力水準を確保するために採用試験と定期的な研修を実施した上で派遣する、という方針であった。

良心的とは言えない業者が大半を占めている家庭教師派遣業界に、ややどんくさいイメージではあるが実直でウソをつかないベネッセ（注：これは私が個人的に抱いているベネッセの企業イメージであり、「広く一般的にベネッセは誠実な会社であると思われている」と断言するものではない）が参入すれば、業界の浄化が始まるのではないかと私は期待した。数人から当方にメールで寄せられた内部情報でも、家庭教師として派遣する学生に対する研修は比較的（同業他社と比べて）充実しているようであり、また教材の抱き合わせ販売もないとのことだった。「よしよし、この調子でベネッセの家庭教師サービスが大きく成長していけば、悪徳業者はどんどん淘汰されて行くな」と思っていた。

しかし、２００２年１２月をもって、ベネッセは家庭教師派遣ビジネスから撤退したようだ。ホームページ上に「撤退」という文字はないが、「ご案内が終了」ということは、どう考えても撤退ということだろう。実に残念なことになってしまった。参入してからわずか１年１０か月だ。

撤退の最大の原因は、生徒がなかなか増えなかったことだろう。良心的とは言えない家庭教師派遣の会社は、「そのへんを歩いている大学生を集めて、何の研修もせず、そのまま家庭教師として派遣し、高額の中間マージンを搾取している」という事業スタイルなので、当然のことだが、商品の中身ではまったく勝負できない。要するに、中身が良くて買ってくれる人が皆無であるということだ。そのため、これらのあくどい家庭教師派遣会社は、優秀な営業マンを高い歩合給で集めて、強烈な営業活動を展開している。家庭教師派遣のチラシを見て、１回でも問い合わせしてきた客に対しては、翌日から毎日営業マンが家庭訪問セールスに押し掛けて、契約書にハンコを押してもらうまで帰らない、という作戦だ。このようなダーティーな方法は、社会的な信用がある程度確立しているベネッセにはできない。ベネッセとしても、さまざまな生徒募集策を講じたはずだが、強烈な営業活動をする他社には勝てなかった、ということだ。

しかし、ベネッセは通信教育の顧客リストを持っている。リストアップされている顧客は、ややどんくさいけど実直でウソをつかないベネッセに対して、好イメージを持っている人が多いはずだ（私もそのうちの一人）。これを利用して郵便で家庭教師派遣をアピールすれば、ある程度の生徒はすんなり集まるはずだ。当初は生徒が少なくて赤字でも、じわじじわりと生徒を増やしていけばいずれ採算分岐点を超え、事業は黒字に転じる。ベネッセほどの大会社なら、１年１０か月やってまだ生徒が少なく赤字でも、その程度の赤字を支える基礎体力は充分にあるはずだから、この時点で事業に見切りを付けるのは早急すぎる。

こう考えると、生徒はある程度集まったが、利益率が低くて採算が合わないので撤退することにした、というのが真相かもしれない。学生に対する研修をきちんとやればやるほどコストがかかるので、受講料を同業他社と横並びで設定すると、まじめに研修しているベネッセだけ利益率が低くなってしまう。さらに教材の抱き合わせ販売や不明朗な料金徴収をしないという点でも、ベネッセの利益率は不利だ。生徒が増加していっても利益率が低いままでは、なかなか黒字化しないし、黒字化してからも初期段階での投資をなかなか回収できない。このような理由ならば、１年１０か月という短期間での撤退はあり得ると思う。

あるいは、もっと他にも理由があるのかもしれない。内部関係者からの情報提供を待ちたいと思う。

先発の家庭教師派遣各社は、ベネッセの撤退を知って、きっと祝杯を挙げたことだろう。しかし、ベネッセの撤退により、日本の家庭教師派遣業界は浄化の大チャンスを逃してしまった。いずれはお粗末なその実態が知れ渡り、誰も家庭教師派遣会社を信用しなくなるという時代が来るであろう。その時になって彼らはやっと、「ベネッセの撤退は我々の業界のプラスではなく、大きなマイナスであったのだ」と気付くのではないだろうか。

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